個性派揃い!「信玄系」注目のお店4選|札幌ラーメン最新事情2023 第4回

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前回は純すみ系の穴場(?)店をご紹介したが、今回は予告した通り信玄系のお店をご紹介したいと思います。

純連やすみれ出身のお店は各店それぞれの個性やオリジナルがあるとはいえ、基本的には同じベクトルの味を提供しているお店が多い。

対して、信玄出身のお店は必ずしもそうではないケースがあるのも面白いところだったりします。

心に一本まっすぐ通った「芯」を感じさせる信玄系

話は横道にそれるが、かの有名な武田信玄は数々の名言を残していますよね。

「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」とか「一生懸命だと知恵が出る、中途半端だと愚痴が出る、いい加減だと言い訳が出る」とか。

大石さん
私も上の2つは好きな言葉で、現代のビジネスマンでも心に響く言葉が沢山あるのではないでしょうか?

心の根っこに突き刺さるというか、そういう言葉や振る舞いを身近で聞いていた家臣たちは、心の真ん中に一本芯のようなものを持って武田信玄に仕えていたのではないかと勝手に想像するのです。

武田信玄の名言「人は白、人は石垣」

別に「信玄」つながりだからといって、らーめん信玄に武田信玄イズムが生きているというわけではないのでしょう。

でも、らーめん信玄出身の店主さんたちは「信玄スタイルのラーメン」を出しているお店も「信玄の味とは違うベクトルのラーメン」を提供しているお店も、何か共通する「芯」のようなものを感じたりするのです。

実際にどう感じるかは読者の判断に委ねるとして、今回は信玄で修業をされ独立されたお店から何店かピックアップしたいと思います。

麺乃やました

ここ最近はWBCにどっぷりはまっていたが、昨年末にカタールで開催されたサッカーワールドカップ2022も楽しかったよね!テレビを見ながら毎回興奮した!

観ていて思ったのは、一流と呼ばれる選手はすべからく「無駄な動きが少ない」ということ。
トラップしてから次のシュートやパスまでの動きの速いこと。

さて、今回紹介するお店は信玄出身でオープン直後からその味が高く評価されている「麺乃やました」というお店。

麺乃やましたの外観

▲コロナ真っただ中といえる2021年2月にオープンしたお店だ

ラーメン好きで有名なアナウンサーの森さやかさん。

何度か座談会でご一緒させていただいたことがあるが、彼女が「麺乃やましたは美味しいだけじゃなくその所作も美しい」との話をされていた。

そう、冒頭のワールドカップの話ではないが「美しい動きには無駄がない」し「無駄のない動きは美しい」のである。

店名 麺乃やました
所在地 札幌市白石区栄通18-10-16 はまなすビル 1F
アクセス 地下鉄東西線「南郷18丁目」駅から469m
駐車場 あり(店舗前2台 + 昼は左隣の「にく式」前2台、夜は右隣の「そば大将」前1台)
営業時間 [月・水~日]11:00~15:00、17:00~20:00日曜営業
定休日 火曜日
席数 16席(カウンター8席)

(店舗情報の引用元:食べログ

信玄系のお手本のような味噌スープ

「麺乃やました」の味噌ラーメン

▲麺乃やましたの味噌ラーメン

信玄での修行が相当きっちりしていたのだと思う。厨房の中でのよどみのない動きがまず目を引く。

そして出来上がったラーメンは「コクがあるのにすっきり」。

黄金色にも見える白みがかった味噌スープ

▲黄金色にも見える白みがかった味噌スープ

これぞ信玄系のお手本というような、まろやかな味噌ラーメンなのである。

ライスと一緒にかっこみたくなるラーメン

ライスも一緒に注文するのがおすすめ

▲当然ライスも頼んじゃうよね~

純すみ系も信玄系もホントご飯との相性が抜群。

いや、札幌ラーメンそのものがご飯のおかずとなると思っているのは私だけではないだろう。

大石さん
いや、私だけかもしんないけど
ライスは蘭越産のななつぼしを使用

▲麺乃やましたでは蘭越産のななつぼしを使用している

厨房での調理シーンをじっくり拝見させていただいたが、信玄系らしく中華鍋でしっかりとスープを沸騰させる。

これによって油とスープとタレが一体化してまろやかな味が生まれるだろう事は以前の記事で書いたと思う。

札幌ラーメンに欠かせないモヤシ

▲札幌ラーメンに欠かせないモヤシ

麺を茹で、ドンブリを茹で麺機の上で温めながら中華鍋でスープの調理をする。一連の流れが見ていて気持ちよい。

スープが沸騰し始め、そろそろ火を落とすかと思ったら、ライスを盛りに動く。

大石さん
おいおい、吹きこぼれない?

と心配になったが、戻ってきた時にはベストな状態で泡立って一体化したスープが完成し火落としをする。

チャーシューを白米に乗せてセルフチャーシュー丼に

モヤシと麺にまろやかな味噌スープがよく絡む

▲モヤシと麺にまろやかな味噌スープがよく絡む

やや余談となるが、私も拙運営店の「札幌ラーメン直伝屋」にヘルプで入ることがある。

大石さん
アルバイトスタッフの足を引っ張ることも多々あるのだが…^^;

麺が茹で上がるまでの数秒はとても貴重だ。

10秒あればご飯はよそえるし、15秒あれば食洗器の食器を片付ける事もできるし、冷蔵庫からネギの補充だってできる。

ホロホロで大きなロールチャーシュー

▲大きなロールチャーシューは持ち上げるとホロホロ具合がよく分かる

このお店のすごさは、調理の時だけじゃなく、抜かりの無い仕込みでも感じるところ。

トロトロで崩れる寸前のバラチャーシュー。箸で切れるにも関わらず肉そのもののを美味しさはしっかり残っている。

このギリギリの柔らかさと美味しさに仕上げるのは中々容易ではないはずである。

ラーメンのチャーシューをライスに乗せてセルフチャーシュー丼

▲セルフチャーシュー丼の完成

な・の・で!

蘭越産ななつぼしにこのチャーシューを箸で半分に切って乗っけると……ほら、最高のチャーシュー丼でしょ?

米粒ひとつ残したくないほどおいしい

▲行儀が悪いけど、ご飯粒ひとつさえ残したくないくらい美味しいということで(笑)

茶碗にこびりついたご飯粒だってこの極上スープをかけるとご馳走になる……ような気がするけどちょっとお行儀が悪かったかもね。

こちらもおすすめ!醤油ラーメン

麺乃やましたの醤油ラーメン

▲非常にバランスの優れた醤油ラーメン

もしかするとこちらのお店の丁寧な仕事は、醤油ラーメンの方が伝わってくるかもしれない。

豚骨、鶏ガラ、煮干し等いろいろな素材を使っていると思われるが、何かが出しゃばって突出するというのではない。

店主さんのセンスも感じるオススメの一杯である。

のれんには信玄出身の証「信玄より」の文字

▲のれんには信玄出身の証「信玄より」の文字

無駄のない所作は、しっかりした技術と経験に基づく動きである事はラーメンを食べればわかるでしょう。

完食したラーメンの器

▲スープも完飲できるうまさなのだ

無駄のない動きは美しく、美しい動きには無駄がない!

そして、無駄なく飲み干されたスープとご飯粒は……美しくない体型を作りかねないが、それは別な話なのでおいておこう。

麺屋大地

たとえば、鳴り物入りでプロデビューしたルーキーにインタビュアーが質問をする。

「初めての試合はどうでしたか?」
それに対して
「とても緊張しました。」
と。

野球でもゴルフでも、デビュー戦を終えた選手の多くはそう答えてきたように思う。

別に好感度を上げるためにそんな発言をしているわけではないだろう。

アマチュア時代にそれなりに大舞台を経験しているであろう彼らにとっても、やはりプロデビュー戦は緊張するというは本当なのだと思う。

店名 麺屋大地
所在地 札幌市北区北二十一条西5-1-1
アクセス 地下鉄南北線「北24条」「北18条」駅から徒歩7分
駐車場 あり(コインパーキングサービス券あり)
営業時間 [平日]11:00~15:30、17:00~21:00[土日祝]11:00~21:00日曜営業 ※スープなくなり次第営業終了
定休日 火曜日
席数 10席

(店舗情報の引用元:食べログ

2023年1月 北24条エリアに堂々オープン

麺屋大地の外観

▲麺屋大地の外観

さて、プロ野球でもプロゴルフの世界でもないが、北24条エリアに新しくオープンした麺屋大地にオープン初日に行ってきた。

沢山のお祝いの花に囲まれてのオープン。しかも、信玄出身との情報は事前に流れていたので、近隣の方もラーメンファンも期待が高かったと思う。

もしスタッフさんに
「オープン初日はどうでしたか?」と質問をしたら「緊張しました。」という答えが返ってきたのではないかと思うのであるが、店内に漂う空気は「緊張感」のそれとは真逆。

デビュー戦なのに「安心感」と「安定」を感じた。

むしろくつろげる空間で、店主さんもスタッフさんも落ち着いた雰囲気だったのにむしろ少し驚いた。

信玄らしい、もうもうと湯気の立つ味噌ラーメン

麺屋大地の味噌ラーメン

▲麺屋大地の味噌ラーメン

さて、信玄出身と聞いたら……まずはやっぱり一発目は味噌でしょう!

札幌の1月、この日はまだまだ気温の低い日だった。お店に到着するまで身体はすっかり冷えきっていた。

写真から熱が伝わってきそうな熱々のスープ

▲写真から熱が伝わってきそうな熱々のスープ

運ばれてきたラーメン。見て!この湯気の感じ!いかにも身体が芯から温まりそうですよね。

寒さに震える北海道民にとっては、この湯気もご馳走の一つ!

大石さん
あ、純すみ系の湯気の立たないラーメンももちろん好きですよ^^;ラードの下に熱々のスープが隠れていることは知っているから

油分の少ない信玄の味噌ラーメンならでは湯気の感じ。そそられるよね~。

息を吹きかけて湯気を飛ばして撮影しています

とはいえ、以前にもちょっと書いたが、湯気があると写真撮影がしずらい。撮影者泣かせなのである。

カメラの後ろで「フーフー」と体中の空気を放出し湯気を避けながら撮影する姿は、我ながらちょっと滑稽だ。そして酸欠になる。

泣けるうまさの熱々こっくりスープ

麺屋大地の味噌スープ

▲コクがあり寒い冬の日にうってつけの味噌スープ

さて、撮影者泣かせと思ったこのラーメン。コクのあるスープは熱々で身体が芯から温まる。

大石さん
冷えた身体の全部が喜ぶこの感じ!撮影者泣かせと書いたけど、美味しくて泣いたわ(笑)
プリップリの中太縮れ麺

▲プリップリの中太縮れ麺

いかにもな札幌スタイルの縮れ麺も最高。信玄系らしいマイルドなスープとの相性抜群。

ロースとバラ肉の2種のチャーシュー。厚みがあるのに柔らか

▲ロースとバラ肉の2種のチャーシュー。厚みがあるのに柔らか

このお店のスープは信玄系でも特にまろやかでクリーミーな印象を受けた。

大石さん
コクがあるのに角がないスープ。これはかなり好き!

で、後日の話。

オープン初日から安定感を感じてはいたのであるが、やはりここはしばらく経ってから改めての再訪問!

辛いのにまろやかな辛味噌ラーメンとチャーハンも見逃せない

辛味噌ラーメンとチャーハン

▲辛味噌ラーメンとチャーハン

はい、こんなん来てしまいました~!ってか、自分で注文したんだけどね。

再訪問の理由の一つは「チャーハンが美味しかった」という情報をキャッチしたのでそれが食べたかった。

もう一つは「あのまろやかな味噌に辛味を加えたらどんな感じなの?」ってことで辛味噌を食べてみたかったからだ。

パンチとまろやかさが引き立て合う辛味噌ラーメン

適度な辛さの辛味噌スープ

▲適度な辛さの辛味噌スープ

この辛味噌ラーメン、確かに辛味が加わることでパンチは加わるのだが、元のスープのまろやかさがさらに際立つ印象。

ゴマのような香ばしい風味とコクがいいね!辛いのにまろやか~!

スープから、麺から、立ちのぼる湯気

▲相変わらず湯気で撮影はしにくい(笑)全力で「フーフー」と湯気を吹き飛ばしながらの撮影

湯気を吹き飛ばしながら撮影するので「湯気がちょっと邪魔」と思いつつ、その実、湯気と一緒に啜るこの麺が最高なんだよね!

プリップリの縮れ麺

▲プリップリの縮れ麺にスープと湯気と香りが絡みつく

湯気と一緒に香る味噌の風味に唐辛子の風味……香りと一緒に啜れば口の中は天国。

旨いのに激安!コショーが効いたチャーハン

オリジナルの塩ダレを使用したチャーハン

▲オリジナルの塩ダレを使用したチャーハン

そしてチャーハン。こちらも湯気からして美味しそうでしょ?

オープン時はセットメニューもあったけど、現在は単品メニューのみ。それでもこのボリュームで450円は激安!

チャーハンはしっとり、パラパラの絶妙な炒り具合

▲しっとり、パラパラの絶妙な炒り具合

シンプルながらコショーのアクセントの効いたチャーハンはラーメンのお供に最高!

ちなみに、オープンから3日間はセット提供していたこともあり「提供に時間がかかった」という話も耳にしたが、手際よく作られたこの日のチャーハンはラーメンとほぼ同時に提供された。

大石さん
強火で一気に調理することで美味しく仕上げられているんだろうね。美味しいチャーハンです^^
軽く甘みを感じるメンマ

▲軽く甘みを感じるメンマ

オープン初日から安定と安心を感じさせるお店だったけど、1ヶ月経ってさらに「安定感」が増したように思う。

しっかりした修業を経ての独立だからだと思うが、ルーキーのはずなのにベテランの風格さえ感じさせている!

完食したラーメンとチャーハンの器

▲美味しいものはいくらでも食べられるね

全力のフーフーと辛さで顔中汗だく、湯気の蒸気も加わってお顔の保湿も十分(?)

味に満足、胃袋も満足、そしてスキンケアもばっちりでお店を後にしたのでした。

らーめん小屋 歩

小泉純一郎元総理の息子さん。次男の小泉進次郎氏は親と同じ職業の「政治家」となり、長男の小泉孝太郎氏は「俳優・タレント」として活躍しているのはご存じの通り。

プロ野球選手だった桑田真澄氏の息子さんMatt氏やプロレスラーの坂口征二氏の息子さん坂口憲二氏しかり、親とは違うジャンルで活躍されている2世の有名人は枚挙にいとまがない。

「らーめん小屋 歩(ふ)」の外観

▲「あるく」でも「あゆむ」でもない「ふ」

そう、「信玄出身」だからといって、信玄系のラーメンを提供しているとは限らないのである。
今日は「歩(ふ)」をご紹介したい。

大石さん
「歩」と書いて”ふ”と読ませることからわかる通り、親がラーメン店(信玄)、子供が棋士なのである。……ウソである。

“ラーメン小屋” 歩(ふ)の名前通り、ラーメン店である。

店名 らーめん小屋 歩
所在地 札幌市東区伏古13条4-1-3
アクセス 地下鉄東豊線「元町」駅から2602m
駐車場 あり(4台)
営業時間 [金・土・日・月]11:00~15:00 17:00~20:30(L.O.20:00)[火]11:00~14:00 日曜営業
定休日 水曜日、木曜日
席数 10席(カウンター6席)

(店舗情報の引用元:食べログ

昼と夜でメニューが変わるユニークな店

らーめん小屋 歩の外観

▲らーめん小屋 歩の外観

信玄で修業をされた店主さんが2015年9月にオープンされたお店。

「無添加・無化調にこだわり体に優しい一杯を提供している」らしい。

昼のメニュー表

▲昼のメニュー表

ユニークなのは昼のメニューと夜のメニューが別にあること。

夜のメニュー表

▲夜のメニュー表

昼夜共通メニューのほか、昼だけ食べられる「貝醤油らーめん」、夜だけ食べられる「ポタージュらーめん」などがある。

昼限定!「分厚い」旨味の貝醤油らーめん

貝醤油らーめん:本来の貝醤油らーめんは味玉ではなくツミレが乗っている

▲貝醤油らーめん:本来の貝醤油らーめんは味玉ではなくツミレが乗っている

どのメニューも魅力的だが、この日は「貝醤油らーめん」をいただいてみた。

この日は通常トッピングのツミレが品切れだったため、味玉をサービスしていただいた。

ツミレの乗った本来の貝醤油らーめん

▲こちらがツミレの乗った本来の貝醤油らーめん:画像提供woodyさん

ツミレ品切れと聞き一瞬がっかりしたのも事実だが、この味玉が美味しくてびっくり!

半熟の絶妙な茹で加減にほのかな醤油と旨味が効いている。

大石さん
ピンチヒッターとは思えない活躍でした^^;
貝醤油らーめんのスープ

▲貝醤油らーめんのスープ

さて、この貝醤油。貝出汁の旨味がグッと最初に押し寄せるのだが、それだけじゃない。

魚介などの和の旨味が重層的に重なっていて優しいのに「分厚い」旨味が感じられる。

主役を引き立てる脇役素材の使い方がさすが!

麺は選択可能で、札幌麺の縮れ麺とこのストレート麺が選べる

▲麺は選択可能で、札幌麺の縮れ麺とこのストレート麺が選べる

ストレート麺はしなやかで、優しい味わいのスープとの相性も抜群だ。

自慢の分厚い炙りチャーシュー

▲自慢の分厚い炙りチャーシュー

そして自慢のチャーシューは噂に違わぬ激うま!

良く煮込まれて柔らかくてしっとりしているのに肉のうまみがちゃんと閉じ込められていて、これは評判になるのも頷ける。

炙りチャーシュー丼で自慢のチャーシューをさらに堪能

ミニ炙りチャーシュー丼

▲ミニ炙りチャーシュー丼

ラーメンのチャーシューがあまりに美味しかったので……ミニ炙りチャーシュー丼を頼んじゃうよね~!

ミニ炙りチャーシュー丼:食欲をそそるタレと一緒にかけられた卵の黄身

▲食欲をそそるタレと一緒にかけられた卵の黄身

見て、このビジュアル!男心をくすぐるよね~!

大石さん
いや、女心だって捕えて離さないに違いない
ミニ炙りチャーシュー丼:トロットロのチャーシューと濃いめの味付けでご飯がすすむ

▲トロットロのチャーシューと濃いめの味付けでご飯がすすむ

提供直前に炙られたチャーシューの香ばしさに、タレの旨味に黄身のコク!絶品です。

このままだと札幌ラーメン最新事情ならぬ「札幌チャーシュー丼最新事情」となりそう(笑)話をラーメンに戻そう。

信玄であり、信玄ではないラーメン

評判の歯切れがいい太めのメンマ

▲評判の歯切れがいい太めのメンマ

さて、冒頭の「二世として活躍されている」彼ら(彼女ら)は、親の職業が気に入らないから別の職業を選んだのだろうか?

恐らくは違うであろう。

彼らが受け継いだのはその「生き方」や「プロとしての取り組み方」であって、それを自分の中に取り入れたらたまたま別の職業だったのだと思う。

半熟加減がたまらない味玉

▲半熟加減がたまらない味玉

写真や記事を見てお分かりの通り、こちらのお店「らーめん小屋 歩」は信玄とは全くベクトルの違うラーメンを提供している。

勝手な想像だが、信玄での修行中に学んだのは「味」だけではないのだろう。

完食したラーメンとチャーシュー丼の器

▲信玄とは味のベクトルは全然違うけど、ラーメンもチャーシュー丼も本当に美味しかった!

そこで得た経験や知識があったからこそ、今の自分のスタイルを見つけることができたのではないか。

大石さん
将棋では打ち歩詰め禁止というルールがあり、「歩」を張って勝負を終わらせるのはいけないらしいが、「歩に参りました!」ってなったわ(笑)

時々、藤井聡太六冠の対局では昼に食べた「勝負めし」が話題になるが、もし対局中のお昼にここのラーメンを食べてしまったら……

午後の対局を待たずして「歩に参りました」というややこしいことになりかねないなぁ、などと変な心配をしてしまうのであった。

麺屋 幸咲

侍JAPANの活躍に大盛り上がりのWBC2023!優勝おめでとう!!

たくさんのヒーローがいるけど、大谷翔平選手の活躍と楽しそうに野球をやっている姿には本当に感銘を受けた。

大谷翔平選手の「二刀流」つながりで、「信玄出身の二刀流」のお店のご紹介。

店名 麺屋 幸咲
所在地 札幌市清田区北野3条3-27-8
アクセス 地下鉄東西線「南郷18丁目」駅から2145m
駐車場 あり(4台)
営業時間 11:00~15:00、17:00~20:00 日曜営業
定休日 火曜日
席数 14席(カウンター6席)

(店舗情報の引用元:食べログ

代表メニューは煮干し中華塩

麺屋幸咲の外観

▲麺屋幸咲の外観

2020年6月にオープンした「麺屋幸咲(こうさき)」というお店。

麺屋幸咲の煮干し中華塩

▲麺屋幸咲の煮干し中華塩

まずご紹介するのは代表メニュー「煮干し中華塩」。信玄出身とは思えないビジュアルですよね。

店内の書に書かれた「信玄より」の文字

▲間違いなく信玄DNAを受け継いでいる店!

だけど、店内にある素敵な書には「信玄より」の文字がしっかり書かれている。

重層的な旨味のスープ

複雑な魚介系の風味と味が幾重にも重なっているスープ

▲複雑な魚介系の風味と味が幾重にも重なっている感じ

このスープ、煮干し中華の名称通り煮干しの香りと旨味にあふれている。

だが、それが一本調子の煮干しの味ではないのだ。

煮干しのディスプレイ

▲ディスプレイされている3種類の煮干し

店内の煮干しの紹介には「白口煮干し」「背黒煮干し」「アジ煮干し」とある。

大石さん
複数の煮干しをブレンドして使っているからなんでしょうね。カツオ節やサバ節などの節系のような風味も感じるような気がしたけど未確認

いずれにしても魚介の選び方やブレンド方法、出汁の抽出の方法まで配慮しているからこその、この重層的な旨味なんでしょうね。

魚貝スープと相性のよいストレート麺

円山製麺のストレート麺

▲麺は円山製麺のストレート麺

ストレート麺の適度な歯ごたえとのど越し。魚介の旨味にあふれたスープには最高の相性ですね!これは美味しい。

繊細な味わいかつ大胆な具材

甘くて柔らかいメンマ

▲甘くて柔らかいメンマ

具材のひとつひとつにものすごい配慮と気遣いが伝わってくる。

太めのメンマはこの太さなのに柔らかくて食べやすく、ほんのり甘さを感じる味わいもスープの良いアクセントになっている。

脂身はトロトロ、赤身とのバランスもいいチャーシュー

▲脂身はトロトロ、赤身とのバランスもいいチャーシュー

豚バラチャーシューはこれでもか!ってくらい柔らかいのに旨味がしっかり閉じ込められている。

これだけ柔らかいと切るのも大変だし、扱いが難しそう。

だけど、これも店主さんのこだわりなんでしょうね!極上チャーシューです。

絶品!北海道産の軟白ネギを使ったネギ飯

軟白ネギの下には鰹節が敷かれたネギ飯

▲軟白ネギの下には鰹節

こちらのネギ飯。ラーメンと同じネギを使っている様子だけど、これがまた絶品!

券売機

▲券売機に貼られたネギ飯の補足説明によるとエビ風味の揚げ玉も使用している

北海道産の軟白ネギを使ったネギ飯はエビの風味とごま油の風味、鰹節の香りでめちゃめちゃ美味しい。

ラーメンのチャーシューを乗せたネギ飯

▲ネギの美味しさが際立っている

ここの美味しいチャーシューをネギ飯に乗せると、極上のサイドメニューになるね。

抜群に美味しいけど、別に「煮干し中華」と「ネギ飯」で二刀流というわけではない。

煮干し中華醤油もおすすめ

煮干し中華醤油

▲煮干し中華醤油

こちらも煮干しの香りが引き立つ極上のスープ。

あっさりとした味わいでありながら煮干しの芳醇な香りとコクが広がるスープ

▲あっさりとした味わいでありながら煮干しの芳醇な香りとコクが広がる

塩も醬油も美味しいしどちらもオススメだけど、別に「煮干し中華塩」と「煮干し中華醤油」で二刀流と言いたいのではない。

だからどこが「二刀流」なんだって?

火・金曜日だけ出現する黒暖簾の幸咲

黒い暖簾がかかった麺屋幸咲の外観

▲黒い暖簾がかかった麺屋幸咲の外観

はい!こちらが「二刀流」ののれんです。冒頭の写真と何が違うかわかりますか?

そう!実はこちらのお店、金曜日と第一・第三・第五火曜日だけ掲げられる黒い暖簾。

この黒い暖簾が掲げられている日は「味噌ラーメン」のみを提供する日なんです。

店内に掲示されている黒暖簾紹介のポスター

▲店内に掲示されているポスター

名付けて「黒暖簾の幸咲」

限定提供だもの!
信玄出身の店主の味噌ラーメンだもの!!
あのこだわりを感じる「煮干し中華」を作る店主さんの味噌だもの!!

そりゃ気になるよね~、行くよね~。

黒い暖簾限定の味噌ラーメン

黒い暖簾の日でないと食べられない味噌ラーメン

▲黒い暖簾の日でないと食べられない味噌ラーメン

はい!こちらが黒い暖簾の日限定で食べられる味噌ラーメン。

信玄系のお店ではあまり見かけない、チャーシューの上に生姜が乗っているのが特徴的。

ほんのり甘い味噌スープは生姜の味変で二度美味しい

▲ほんのり甘い味噌スープは生姜の味変で二度美味しい

さすが、信玄出身の店主が作る一杯。

この味噌のまろやかなスープが嫌いという人はいないんじゃないかな?

旨味が強い辛味噌ラーメン

辛味噌ラーメン

▲辛味噌ラーメン

こちらが黒い暖簾限定の辛味噌ラーメン。見た目かなり赤いですが、辛さより旨味を感じる唐辛子。

キリッと引き締まり、信玄系のまろやかな味噌にはちょうど良いアクセントになる感じ。これも美味しいね。

唐辛子の赤が辛そうに見えるが実際はほどよい旨辛スープ

▲唐辛子の赤が辛そうに見えるが実際はほどよい旨辛スープ

煮干し中華が抜群に美味しいだけに、「煮干し系」と「味噌系」のまったく違うベクトルにちょっと驚くかもね。

大石さん
信玄出身という情報があるからこの味噌ラーメンの味に納得だけど、それを知らずに「煮干し中華」しか食べていない人にしてみたら「え?同じ人が作ったの?」ってなるかも知れない(笑)

味噌ラーメンに合わせた黄色い縮れ麺

このスープには「これだよね~」と言いたくなるような相性抜群のプリプリ麺

▲このスープには「これだよね~」と言いたくなるような相性抜群のプリプリ麺

味噌ラーメンには縮れ麺ってことで、こちらは森住製麺の黄色い縮れ麺を使っているあたりもこだわっている!

大石さん
ラーメン好きの心理をわかっていらっしゃる(笑)

トッピングへのこだわりも感じてほしい

先ほど少しトッピングに触れたが、ネギ、メンマ、チャーシュー、味玉……全部にこだわりを感じる。

一度食べれば虜になる絶品チャーシュー

▲一度食べれば虜になる絶品チャーシュー

カウンター席から見える厨房の中のタッパー。その中には丁寧に並べられた味玉やメンマ。

そういう小さなところからも「丁寧な仕事をしている」という事がビンビン伝わってくる。

半熟の味玉

▲半熟の味玉

そして、その丁寧な仕事がきちんと具材の美味しさにつながっていると思う。

ラーメンを食べる時にその辺の一つ一つのトッピングにもぜひ注目してほしい。

実力に裏打ちされた二刀流ラーメン

白暖簾には「円山製麺」の文字

▲白暖簾には「円山製麺」の文字

白暖簾と、

黒暖簾には「森住製麺」の文字が入っている

▲黒暖簾には「森住製麺」の文字が入っている

黒暖簾。

どちらの日もかなり美味しいし皆に勧めたくなるようなお店だ。

完食したラーマンとネギ飯の器

▲白暖簾の日の一枚:煮干し中華塩とネギ飯を完食!

二刀流の大谷翔平選手が単純に「野球が上手い」だけで評価されているのではなく、
「野球を心から楽しんでいる」
「野球と真摯に向き合っている」
という話は良く耳にする。

だから大谷選手の野球を見ている我々も楽しいのだと思う。

ここ麺屋幸咲の店主さんが「ラーメンと真摯に向き合っている」のはすぐにわかることだが、きっと「ラーメン作りも心から楽しんでいる」んじゃないかな。

このお店の色んなラーメンをいただいてそんな風に思うのでした。

さいごに

ということで、今回は信玄で修業をされ独立をされたお店をいくつかご紹介しました。

信玄の味を踏襲してより磨きをかけようとされている方、まったく違う味で勝負されている方、あるいはそれら両方をハイブリッドで提供している方など様々です。

ですが、どのお店も高い評価を受け、地元の方々に認められているのが共通点のようにも思います。

信玄に限らずですが、名店と呼ばれるお店とそこから独立された方々に共通する「〇〇イズム」という、名店ならではの「ラーメンとの向き合い方」の伝統のようなものがあるような気がします。

大石さん
「この店主さんはどこでどんな修業をされたのかな?」なんて、そんな事にも思いをはせながら食べ歩くのも楽しいかもしれません

さて、今回までは札幌スタイルの「札幌ラーメン」のお店を中心に取り上げてきました。

次回からはまた違った切り口で札幌のラーメントレンドをご紹介していこうと思います。

WRITER/大石 敬(札幌ラーメンコンシェルジュ)

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