長きに渡り続けさせていただいた札幌ラーメン最新事情!途中コロナ禍もあり連載の無い期間がありながら、なんだかんだで12年ほど続けさせていただきましたが、いよいよ今回が最終回となります!
毎回駄文にお付き合いいただきありがとうございました^^
札幌ラーメン最新事情はコンセプトとして「札幌の新店の中からトレンドを探る」と言う事を意識して書いてきました。
できるだけ新店の中からユニークなお店や注目となるお店をピックアップし、それに沿ってテーマを決めて書くというスタイルで続けてきました。裏を返すと「テーマに沿っていないために紹介できないお店」と言うのも出てくるわけで……。それが毎年もどかしくも思ってきました。
そこで最終回の今回は「今年オープンのお店で紹介できなかったけど注目しているお店&自分が好きな味のお店」を3店ピックアップして紹介しようと思います!
過去にも同様に「まだまだある注目店」的な切り口でその年の最後に取りこぼしたお店を紹介したこともありました。

とはいえ、結局今回ピックアップした3店の他にもまだ紹介したいお店があったりするんだよな。「取りこぼしたお店紹介で取りこぼしたお店」って続編を書かなくちゃならなくなるのでそれだといよいよキリが無いですね(笑)
あくまで独断と偏見で3店に絞って選ばせていただきました。最後までお読みいただけたら嬉しく思います。
麺と神の子

最初にご紹介するのは今年7月にオープンした麺と神の子!実はこちらのお店は以前に紹介した「麺鍾馗(めんしょうき)」のセカンドブランド
「神の子」ってスゴい名前と思うかも知れない。そもそも鍾馗という名前はこのような説明がされている。
鍾馗(しょうき)は、主に中国の民間伝承に伝わる道教系の神。
※引用元:Wikipedia
加えて「麺鍾馗」の店主さんが京都で立ち上げた超人気ブランドが「セアブラノ神」であるから、まさに「神」が店主の麺鍾馗。
そのセカンドブランドなら「神の子」って名前以上にしっくりくるものは無いんじゃないかな。

現在は「鶏塩白湯」「背脂醤油」「神の子ウイングまぜそば」の3つの麺類に「鍾馗丼」と「チャーマヨ丼」という2種の丼物というラインナップで提供されている。
店名 | 麺と神の子 |
所在地 | 札幌市中央区北1条西7-1-3 EXYビル 1F |
アクセス | 西8丁目駅から392m |
駐車場 | なし |
営業時間 | 火~土曜日 11:00~15:30 |
定休日 | 月・日曜日 |
席数 |
ー |
(店舗情報の引用元:食べログ)
麺と良く絡む純白のスープ「鶏塩白湯」

まずは「鶏塩白湯」。

ネギの緑にペッパーの黒などトッピングの色のカラフルさもまるでドレスにまとったアクセサリーのように美しい!

そして美しいだけじゃない!泡立てられた鶏白湯のスープは旨味たっぷりなのにまろやかですっきりした口当たり。当然のように美味しいスープ。
ほんのり香る柑橘系の香りは独自の香味オイルによるもの。

京都の老舗製麺所「麺屋棣鄂(ていがく)」の麺はしなやかで純白のドレス……じゃない純白の鶏白湯スープを纏うと最高に美味しい!

トッピングの一つ一つにもこだわって当たり前。しっとり仕上げられたチャーシューは柔らかくて肉の旨味が閉じ込められている。

九条ネギの甘さやアーリーレッドの持つ玉ねぎ特有のピリッとした引き締め感。薬味の一つ一つもラーメンの美味しさや美しさとのバランスを考えられたものだ。

「鶏塩白湯」を頼むと添えられるレモン。

これを途中で絞るとスープがキリッと引き締まり、また一つ新しい表情が生まれてくる。

「麺鍾馗」とは違う風味を味わって「背脂醤油」

こちらは「背脂醤油」。
「麺鍾馗」の人気メニューに「背脂煮干」というのがあるので、最初はそれと同じものかと思ったのだが、ベースのスープが全然違う。

同じ「魚介の風味」というカテゴリでも「麺鍾馗」は煮干しベースなのに対して、こちらは節系の出汁がベースになっている。


合わせている麺は「さがみ屋製麺」の平打ちの麺。このピロピロした食感は個人的に大好き!もちろんスープとの相性も抜群!
お手頃価格の丼ぶりも一緒にいかが?

▲鍾馗丼ハーフ
ついでに丼もちょっと触れておこうかな。「鍾馗丼」450円、「鍾馗丼ハーフ」350円というリーズナブルな価格。ラーメンのお供に最高!

麺をすすって、スープを飲んで、丼を掻っ込む!これこそ神が与えてくれた「至福」ってヤツですかね(笑)
〆のご飯付き!「ウイングまぜそば」もおすすめ

最後に「神の子ウイングまぜそば」もちょっと触れておこう。具材に覆われたまぜそばは彩りも鮮やか!

一つ一つの具材がちりばめられた華やかな盛り付け。
せっかく丁寧に盛りつけられた具材は一瞬混ぜるのをためらってしまうが、それをあえてぐちゃぐちゃに混ぜるからまぜそばは美味しいのである。


この麺、ちょっと形状が特殊なのがわかりますか?
ウイング麺と呼ばれる羽根がはえたようなこの麺「麺屋棣鄂」の自慢の麺。
このちょっと不揃いの形状がスープやタレとよく絡むのでもちろんまぜそばとの相性も抜群!

卓上調味料のリンゴ酢やラー油なんかを加えて味変を楽しみながらいただくのもイイでしょう。


麺を食べ終えても具材が残るのでお店の方に声を掛けましょう!〆飯を提供してくれます。

これがまた美味しいんだよね!タレの最後の一滴まで余すところなくいただきましょう。
「そこに愛はあるんか」!?細部にもユニークたっぷり

お店ののれんに書かれた「そこに愛はあるんか」の文字。これは作り手側の自分たちの訓戒的な意味かな?
十分に作り手側の愛情を感じましたよ~!と思ったのだが……。

スープを飲み干すとそこには文字が……!

「底に愛はあるんか」と「そこ」と「底」を掛けた店主さんならではのちょっとした遊び心。
食べ手側も底まで飲み干すほどの「愛」がありますよ~と心の中で思いつつ、ご馳走様!
結局店内は「作り手」と「食べ手」の愛に満ち溢れた空間になってるってところでしょうか。
中華ソバ あそぶ亀
※亀の字は看板では旧漢字の「龜」ですが以降「亀」と表記させていただきます。

ユニークな名前ですね~!店主さんに伺うと御祖父様のお名前からいただいたものとのこと。

お店のトイレにも飾られているこのイラスト!亀が甲羅を脱いでラーメンをすすっている。
あそぶ亀というより「くつろぐ亀」って感じですかね(笑)

そんな遊び心も感じるお店ですが、店主さんは某一流ホテルの中華シェフを長く勤めていらっしゃった方。
料理の腕は確かで「遊び心」はあっても「遊び半分」では決してない!というよりむしろ「超絶ガチ」なお店である事を最初にお伝えしておきます。
店名 | 中華ソバ あそぶ龜 |
所在地 | 札幌市西区発寒3条5-3-11 |
アクセス | 市営地下鉄東西線発寒南駅より徒歩約3分、発寒南駅から201m |
駐車場 | あり(店舗前3台) |
営業時間 | 火~土曜日 11:00~14:30、17:00~21:00 日曜日 7:00~14:30 夏季短縮営業 17:00~20:00 |
定休日 | 月曜日 |
席数 |
13席(カウンター5席、4人掛けテーブル2) |
(店舗情報の引用元:食べログ)
スープも煮干し、味変も煮干し!お店おすすめの「煮干し正油ソバ」

色々とあるメニューの中からまずは「煮干し正油ソバ」からいただいてみました。

丼のフチに並べられたチャーシューが目を引きます。
低温調理で仕上げられたレアチャーシューを美味しい状態で食べてもらいたいとの店主さんのお考えなのでしょう。

ラーメンで「煮干し」というとどちらかと言えば主役に使われることが多いですよね。音楽で言えば「ソロ楽器」のようなもので「前面にドーン」って感じの使い方が多い。
ところがこちらのお店ではどちらかと言えば「ハーモニーの一つ」と捉えている印象。煮干しはしっかり香るが、出しゃばらない。

醤油ダレに使われている昆布・干しエビ・イタヤ貝などの複雑な旨味とのハーモニーが絶妙!香りと味のバランスの取り方が素晴らしい。

そこに合わせるちょっと低加水の麺が相性抜群。そして、すする時の香りがいいんです!

食感抜群の極太メンマ。

肉の旨味が閉じ込められた低温調理チャーシューなど、トッピングだって抜かりはない。
非常に美味しいラーメンに仕上がっている。とはいえ「上品すぎる」と感じる人もいるかもしれない。

▲左から煮干し酢、煮干し油、ラー油
そこで店主さんが用意しているのがこちらの味変アイテム。

これを使って自分好みにチューニングしてもらおうって魂胆。

これがまたほんの少し入れるだけでかなりの変化をもたらしてくれる!煮干し酢と煮干し油をちょいと垂らすと、いきなり煮干しが「ソロ楽器」として響き渡る!

これは美味しい!店主さんの実力はかなりのものなのは間違いない。
こりゃ他のメニューも食べたいぜ!
プリプリ食感を楽しむ「鶏ニボ塩蝦ワンタン」

ということで、すぐに後日の訪問でいただいたのは「鶏ニボ塩蝦ワンタン」。



そしてエビワンタン。
ツルツルの皮の中に包まれているのはプリップリのエビ。流石中華で良く使われる食材だけあって、エビの扱いはお手の物なのでしょうか?


非常に完成度の高い一杯。香りのバランスの取り方というか、素材のハーモニーの作り方が見事というか……。
名指揮者の音作りにも通じるように思ったのでした。
絶品料理がひそむ一品料理も要チェック

美味しいラーメンをご紹介したので終わりにしたいところだけど、実はどうしても紹介したいメニューがあるので続けます。
冒頭にも書いた通り、ホテルで長く調理をされてきた名シェフ。
夜メニューとしてユニークな一品料理が並ぶ。これは食べたくなるでしょう^^;

肉焼売!でっかい焼売が2個で250円は安い。ちなみにこの焼売は昼も提供されています!

そしてこの焼売がまた美味しいの。ふわりと生姜の香りが立ち上り、噛むと肉感しっかりの餡。
味付けされているので、カラシだけちょんと付けて食べたら……ビール持ってこーい!と言いたくなるけど車だった^^;
ラーメンのお供としても抜群だけど、これをツマミに一杯やりたくなっちゃうね。

そしてもう一品「スペアリブ豆鼓蒸し」。


そしてこれがまた絶品!たっぷりの豆鼓をまとった骨付きのスペアリブ。噛みしめると溢れる肉汁に、豆鼓のコク。

実はこちらのお店、地下鉄東西線「発寒南」駅から徒歩で数分の距離なんです!チョイ飲みセットなんてのもあるし、仕事帰りに一杯飲るのもイイお店かも。

一品料理でビールやハイボールを飲んで、〆にラーメンとか最高じゃない?

冒頭のくつろいでいる亀のイラストが思い浮かんだ。次回は私も地下鉄で伺い、この亀さんに負けないぐらいくつろいでやるぜ!
中華蕎麦辰巳屋

最後にご紹介するのは「中華蕎麦辰巳屋」。2024年5月にオープンしたお店です。

店主さんは市内中心部の人気店で腕を振るっていた方で、その当時から東京で人気ラーメンのインスパイアメニューなど限定メニューも積極的に提供し、その引き出しの多さでも注目されていた方。
その店主さんが満を持してご自身のお店を構えたってんだから期待も膨らむ。
店名 | 中華蕎麦 辰巳屋 |
所在地 | 札幌市豊平区西岡4条9-1-26 グリーンヒルシャトー |
アクセス | 自衛隊前駅から1716m |
駐車場 | あり(3台) |
営業時間 | 11:00~16:00 |
定休日 | ー |
席数 |
ー |
(店舗情報の引用元:食べログ)
想像を超える濃厚さ!「濃厚豚骨魚介醤油の極太つけ麺」

まずは「濃厚豚骨魚介醤油の極太つけ麺」からいただいてみましょう!
丁寧に整えられた麺が美しい!「極太」とメニュー名にある通り、まずはその麺の太さに驚く!

レンゲに乗せられた塩。ゲランドの塩とのことで、お店のオススメの食べ方は「まずは塩で麺のみ少量味わって欲しい」とのこと。

小麦のふすま部分も練り込まれたと思われるこの極太麺、かなり小麦の風味の強い麺。噛みしめると甘みも感じるこの麺は、太さも味もインパクト大!
そして今まで食べた事のないようなこの弾力と食感!跳ね返すような弾力がありながら決してゴワゴワとした硬さではない。
もっちりとした食感も兼ね備えていて、噛みしめるたびに小麦の風味が口に広がる。

そして「濃厚」と謳われているつけダレ。

レンゲを入れた写真でその濃厚さが伝わるかな^^;
豚骨と魚介の風味がガツンと押し寄せる!これ、相当美味しいつけダレです。

極太でインパクトの強い麺に合わせて濃厚なつけダレも抜群!
「“極太”やら”濃厚”やらメニュー名に入っているけど、言うてもそんな事は無いやろう」なんてアヤシイ関西弁で思ったそこのアナタ!……私です^^;


柔らかくトロトロに仕上げられたチャーシューも最高!スープも麺もトッピングも随所に丁寧な仕事ぶりとこだわりが感じられる。
らぁ麺「豚骨と渡り蟹の魚介醤油中華蕎麦」は香りを楽しんで

もう一つの人気メニュー「らぁ麺」。こちらは「豚骨と渡り蟹の魚介醤油中華蕎麦」と銘打たれています。

運ばれてきた瞬間にその美味しそうな香りに食欲中枢が刺激されます!ちなみに「並(150g)」も「大(220g)」も同一料金!たっぷり食べたい方にはありがたいですね。

豚骨・魚介に渡り蟹の風味がふわりと香る。


ストレートの麺は低加水と思しきものだが、もっちり感もあってスープとの相性は抜群!
オープン直後は麺とスープの相性に苦労していたようだが、この組み合わせはバッチリはまっている印象。

またこのアクセントの柚子がイイんだよね~。ほのかに香る柑橘系の香り。食欲中枢のスイッチを押す感じ^^;


ちなみに卓上調味料として置かれている「昆布酢」。つけ麺だけじゃなくらぁ麺にも合うので後半の味変にオススメ!
新メニュー&期間限定メニューにも注目!

こちらは新メニューの「濃厚豚骨魚介の塩つけ麺」。

スープの魚介感が強く感じられる一方、まろやかな感じで濃厚ながら食べやすい。

ちなみに私が直近で訪問した11月中旬は期間限定メニューとして「つけ麺Light~原点元味~」なるものが提供されていた。

平打ち麺に少しさらりとしたつけダレ。

あくまで個人的な選択ですが、じっくりとつけ麺の美味しさを味わいたい日にはデフォの「濃厚豚骨魚介の極太つけ麺」か「濃厚豚骨魚介の塩つけ麺」。
ズバズバと思いっきり食べたい気分の日にはこの「つけ麺Light~原点元味~」かな。

このメニューは期間限定だけど、冒頭にも書いた通り引き出しの多い店主さん。これからも限定メニューも恐らく色々と提供されると思います。
デフォメニューだけじゃなく限定メニューも要チェックのお店です。

▲つけ麺には昆布出汁の効いた割スープが提供され、最後まで美味しく楽しめる
「濃厚豚骨魚介醤油の極太つけ麺」が濃厚なつけダレにインパクトの強い麺ということで、一番スポットが当たっているようだけど、らぁ麺も限定メニューも全部が美味しいお店。

自信を持ってオススメできるお店なのは間違いないけど「何を食べたらいい?」って質問されると相当迷うかも。
毎回何を食べようか迷う楽しさがあるお店と言えるかもね!
さいごに

最終回の今回は「今年オープンのお店で紹介できなかったけど注目しているお店&自分が好きな味のお店」を3店ピックアップして紹介してみました。
毎年新しいお店が生まれ、新しいトレンドが生まれている札幌のラーメンシーン。
ただ、新しいお店が生まれる一方で同じ数だけ閉店しているのも寂しいですが現状です。
新店を中心にご紹介していくとどうしても過去の記事には閉店してしまったお店も少なくありません。
それでも、新しいお店が次々と生まれるとどのお店に行くか、お店を選ぶのもきっと大変だろう。そんな方のお店選びの一助になればと思い始めた「札幌ラーメン最新事情」でした。
駄文ばかりでお店選びや食べ歩きの参考になっていたかどうかわかりませんが、それでも沢山の方に読んでいただけて光栄でした!
本コラムを読んでいただいた皆さん一人一人にお礼を言いたいです。ありがとうございました!
「札幌ラーメン最新事情」、これにて一旦終了とさせていただきます。
また別な機会や別な切り口などで札幌のラーメンを紹介することもあるかも知れませんが、その際にはどうかよろしくお願いいたします。
