さて、いきなりですが……
「札幌ラーメン」を知っていますか?
ですが、実はこれ、結構重要な事だったりします!
札幌にあるラーメン屋さんすべてを「札幌ラーメンのお店」と思っている方が意外と多くいらっしゃるのです。
でも、実はちょっと違います。今回はここのところを掘り下げていこうと思います。
■目次
札幌のラーメン屋さんで食べるラーメンはぜんぶ札幌ラーメン?
札幌のラーメン店には、ご当地ラーメンである「札幌ラーメン」を提供しているお店と、そのスタイルにこだわらないラーメンを提供しているお店があります。
ざっくり言うと、「札幌ラーメン」のお店と「札幌“の”ラーメン店」があるという事を最初に伝えておかなくてはなりません。
前者の「札幌ラーメン(トラディショナルラーメン)」に対して、後者を「トレンド系ラーメン」などと呼ぶこともあります。
誤解の無いように書いておきますが、札幌ラーメンが正解で札幌のラーメン(トレンドラーメン)が不正解という事ではありません。
その2つがあるから札幌のラーメンシーンがバラエティ豊かになっているのです。
是非札幌でラーメンを楽しく食べるために、その辺のことをきちんと知った上で食べ歩きを楽しんでほしいなと思う次第です。
連載を始めるにあたり、まずは最初にその辺を紐解いておいた方がいいかな?と。
ということで、ここからは「札幌ラーメンって何なんだ?」ということを具体的に解説していこうと思います。
素朴な疑問。札幌ラーメン=味噌ラーメン?
さて、「札幌ラーメン」と聞くと「何味のラーメン」を思い浮かべますか?多くの人が「味噌ラーメン」と答えるのではないでしょうか?
そう!それ!結構大事です。
実は札幌ラーメンの系統のお店には「味噌・塩・醤油」の3味を提供しているお店が多い。自分は味噌派ではなく「札幌醬油ラーメンファン」という方も少なくありません。
じゃあ全国的に見た場合、なぜ「札幌ラーメン=味噌ラーメン」という印象を持つ人が多いのでしょうか?
その為には歴史を少し紐解かなくてはなりませんが、とりあえずさらっと重要な事だけお伝えしておきましょう!
札幌ラーメンの歴史は「味の三平」から始まったと言っても過言ではない
そもそもラーメンに味噌という概念を持ち込み、今の札幌ラーメンの原型となる「札幌味噌ラーメン」を開発したのは「味の三平」初代店主の大宮守人(おおみや もりと)氏というお方。
味の三平は、現在も大丸藤井セントラル4Fにて営業をしている人気のお店です。
店名 | 味の三平(あじのさんぺい) |
所在地 | 札幌市中央区南1条西3丁目2 大丸藤井セントラルビル 4F |
アクセス | 地下鉄南北線「大通」駅より徒歩3分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 11:00~18:30 日曜営業 |
定休日 | 月曜日・第2火曜日 |
席数 | 13席(カウンター13席) |
(店舗情報の引用元:食べログ)
その後「暮らしの手帖」の花森安治編集長が味噌ラーメンを紹介。
また、「さっぽろラーメンの熊さん」が東京や大阪のデパートで開催された北海道物産展で味噌ラーメンを提供するなど、札幌ラーメンの名が全国区になる重要な背景もあるのですが……ひとまず置いておきましょう。
とにもかくにも、味の三平で生まれた味噌ラーメン!
味噌ラーメンにニンニクを使う事や、モヤシを使う事、西山製麺と一緒に縮れ麺を開発した事、あおり調理をして香ばしさを引き出す事などなど……。
もはや新メニューの開発というより「発明」と言ってもいいと思うのである!
ということで、札幌ラーメンを語り、定義付けする上でも、味の三平のラーメンを中心に解説していきたいと思います。
札幌ラーメンの定義とは?
前述の通り、味の三平が札幌味噌ラーメンを生み出し、それが定着することによって札幌がラーメンの街と印象付けられることになりました。これは札幌のラーメン史において大事なポイントです。
ということで、私としては味の三平の大宮守人氏が生み出した味噌ラーメン以降が、人々のイメージする「札幌ラーメン」だと思っているのです。
なので、それを原型としてその流れや影響を受けているラーメンを札幌ラーメン定義と考えたいところ。
もちろん札幌ラーメンの定義は別に国が定めているとか、法律で決められているものではないので、これからお伝えする札幌ラーメンの条件は、私が個人的な勝手な解釈をした私的な定義だという事をご理解願います。
大石流 札幌ラーメンの条件①ラードでモヤシを炒める(あおり調理)
一つ目の条件は、中華鍋(持ち手の付いた北京鍋が多い)でモヤシやタマネギなどの野菜を炒めていること。タマネギは必須ではないし他の野菜が入ってもいいが、モヤシだけは必須!
この炒める工程を「あおり調理」と呼びますが、お店によって微妙に火加減や工程に違いがあります。
炎を上げて長めにあおることで香ばしさを引き出すお店もあれば、モヤシをラードでコーティングする程度の軽めの調理に抑えているところもある。
ちなみにこのあおり工程……ただ炒めているだけに見えても実際は結構難しく、お店の個性がでる調理だったりする。
とあるお店の店主曰く「数秒短いと香りが立たないし、数秒長いと焦げ臭くなる、一番重要な工程」とのこと。
大石流 札幌ラーメンの条件②ニンニクを使う
二つ目の条件はニンニクを使用しているということ。味の三平は味噌汁をヒントに味噌ラーメンを開発したとのことですが、味噌汁と味噌ラーメンの最大の違いは「ニンニク」や「ショウガ」などの香味野菜を使う事だと思っています。
特にニンニクは必須だと思うし、ニンニクの入っていない味噌ラーメンは札幌味噌ラーメンっぽくないと感じる。
ただし!これは味噌ラーメン限定で、塩ラーメンや醤油ラーメンには使われていないお店がある事も補足しておこう。
大石流 札幌ラーメンの条件③縮れ麺を使う
三つ目の条件は縮れ麺を使っていること。一部では白い縮れ麺を使用しているところもあるが、黄色い縮れ麺を使用しているお店が多い。味噌ラーメンが生まれるまでは札幌のラーメンはストレート麺が多かったらしい。
ただ、味の三平と西山製麺が無ければ生まれなかった「多加水縮れ麺」は今に続く札幌ラーメンの重要な要素……この辺も詳しくは歴史編で触れたい。
他にも加えたいと思う条件はいろいろある
札幌ラーメンの条件として挙げた三点以外にも条件に加えたい事項はあるかもしれない。
油はラードを使うとか、ひき肉を使うとか、味噌・塩・醤油三味を提供しているとか……。ただ、確かに多くのお店がその条件を満たしてはいても、それが必須条件ではないような気もする。
また「どこからどこまでが札幌ラーメンか」という話題には諸説あると思います。人によっては違う考えの人もいるでしょう。
「炒めずに茹でたモヤシを乗せたらダメなのか?」
「ニンニクを使わないとだめなのか?」
などなど異論のある方もいるでしょう。
ですが、味の三平が発明した味噌ラーメンにこれらが必須となっていることを考えると……個人的にはやっぱりこれらを札幌ラーメンの定義の条件にしたいところかな。
札幌ならでは?ご当地ラーメンとトレンドラーメンのバランス
札幌ラーメンに限らず全国には多くのご当地ラーメンがあります。有名なところでは喜多方ラーメンや博多ラーメンなどがそれにあたります。
で、全国のご当地ラーメンが有名なところは「有名であればあるほどご当地ラーメンの比率が高い(勢いが強い?)」ように思うのです。
もちろん喜多方にも喜多方ラーメンにこだわらないラーメンはあるし、博多もそれなりにバラエティ豊かになっているのも知っています。
でも、札幌ほどその両方のバランスが取れているところも珍しい気がしているのです。
強いご当地ラーメンがあって、それが愛されながらも新しい味がどんどん登場し受け入れられている。これは札幌の一つの特徴だと思います。
ご当地ラーメンの「札幌ラーメン」と「トレンドラーメン」の両方が楽しめるのが札幌の良さだと思う。
それらの違いをちゃんと理解したうえで札幌でのラーメン食べ歩きを楽しんでほしいな。
さいごに
第一回は「札幌ラーメンってナンだ!?」ってことを紐解いてみました。札幌にはご当地ラーメンとそれに縛られない新しい味がある事、なんとなく伝わったでしょうか?
札幌の人気店の中には「味噌ラーメン」をメニューに置かないお店も出てきています。それらは「札幌ラーメン」というカテゴリではなく「トレンドラーメン」のカテゴリーであることも、この記事で少しでもご理解いただけたなら嬉しく思います。
次回は「札幌ラーメン」の中でも「ここはオススメ」というド定番のお店を中心に、一部比較的新しいお店もご紹介できればと思っています。