【札幌ラーメン最新事情2017⑤】手間を惜しまぬ低温調理が 至福の一杯を彩る!

みなさんこんにちは。
今年も5回に渡りお届けしてまいりました「札幌ラーメン最新事情2017」もいよいよ今回が最終回となりました。

その昔とある料理人がこんなことを言っていました。
「手間をかけた料理が必ずしも美味しい料理になるとは限らない。だが、美味しいものを提供するのに手間を惜しむ奴は上に行くことはできない。」と・・・。
なんだか妙に説得力があり、腑に落ちる台詞だったことを覚えています。

ラーメンに於いてももちろん同じことが言えると思います。 調理にかかる手間・・・もちろん様々な工程がありますし、一概に「コレだ!」と言えるものがあるわけじゃないですが、ここ最近では「低温調理チャーシュー」がそれの一つにあたるのではないかと思います。
「トッピングだって美味しく食べてもらいたい→だから面倒でも低温調理チャーシュー」という考えでそれらを提供しているお店が多いように思います。
新店に於いてはある意味「手間を惜しまないぞ!!」という決意表明にも感じられます。
ということでそんな『決意表明チャーシュー(?)』を提供している新店にスポットを当ててみたいと思います。

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麺や金と銀

最初にご紹介するのは2016年9月オープンの「麺や 金と銀」。
昨年オープンの新店の中ではかなりの注目株。

というのも札幌では珍しい「貝」を出汁の主軸のひとつとしているからだ。

使用している貝はホンビノス貝がメインで以前は白ハマグリという名称で呼ばれたりしていたので私なんかはそっちの方がしっくりくるのですが、最近はホンビノス貝の名称も定着しつつあるようですね。
クラムチャウダーには本来この貝が使われるらしく、貝そのものも食べごたえがあるが、なによりその出汁が秀逸!

これをラーメンに使っちゃおうってんだから、食べる前からテンションも上がるってもの!

貝殻の黄金色。そして旨みのたっぷり出た貝出汁のスープも黄金色を連想させる色合いなのでキーワードは「金」

もう一つの出汁の主軸は「煮干し」。 こちらはキラキラ輝く銀色の鱗から連想されるキーワードは「銀」

この2本のスープを柱にしているので「金と銀」という店名になっているとうのが、なんだかとてもしっくりくるのでした(^^)

さて!あらためて「金SOBA塩」からご紹介。

薄黄金色のスープに低温調理チャーシューのピンク、三つ葉の緑、糸唐辛子の赤と見た目からして美しい(^^)

ホンビノス貝の旨味に鶏の旨味が相まって、ほっぺたの奥がキュッと音を立ててしまるぐらい美味しい!
・・・ほっぺたの奥って・・・伝わりにくいですね(笑)(^^;
食べてみてください!

トッピングの白ハマを堪能しつつ

このストレート麺をすすると優しいけど強く印象に残る旨味が口いっぱいに広がります。
あー・・・貝の出汁って美味しいなぁとあらためてしみじみ感じること請け合い!

今回のテーマのもとになっている低温調理チャーシューも秀逸ですし、新店とは思えないほど隅々までにくい配慮が行き届いている。

そしてもう一つの柱の「銀SOBA」

写真は「銀SOBA醤油」で煮干しの出汁+鶏清湯を醤油でまとめ上げた一杯。

煮干しの旨味が押し寄せてきます(^^)

で、先日お邪魔した日にはこれをベースにした限定メニューがあったのでそちらをいただいたのですが・・・。

銀SOBA背脂醤油!

銀SOBAの上に振りかけられた背脂。
見た目は非常にワイルドでやんちゃな印象だが、これが思いのほか食べやすい。

煮干しの旨味と背脂の甘さが絶妙にマッチしている。

この「多加水平打手揉み麺」のとの相性も抜群。

冒頭に書いた通り、スープの柱は貝出汁の「金」と煮干し出汁の「銀」。
だが、こちらのお店のもう一つの楽しみ方は、積極的に提供されている「限定メニュー」の数々にもあると思う。

ラーメン好きの心をくすぐるキーワードを選んでは限定メニューで投じてくるあたりはやはり只者ではない。

この日のもう一つの限定メニューだったホタテ稚貝と煮干しの「つけSOBA」には

トッピングでホタテとバターのペーストが添えられていた。

そんなひと手間がラーメン好きの心をくすぐるよね~(^^;

定番メニューを楽しむか、その時々の限定メニューを楽しむか・・・。
それはその時の気分で構わないと思うのだが、いずれにしてもどのメニューも「楽しませるぞ!」という思いを感じてもらえるんじゃないかな。
低温調理チャーシューだけじゃなく手間を惜しまない姿勢は常にワクワクを提供してくれるのでした!

ワクワクしすぎるメニューが多くて、この日も2杯食べてしまったというのは蛇足の情報でした(-_-)

【麺や 金と銀 】(閉店)
住所:札幌市東区東苗穂8条2-3-43
営業時間:[月~土] 10:30~15:30 16:30~19:30(L.O.無) [日・祝] 10:00~18:30(通し営業)
定休日:無し
TEL:011-792-2237

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ジャンバタラーメン

続いてご紹介するのは2016年4月にオープンした「ジャンバタラーメン」

店名の由来は醤油の「醤(ジャン)」と「バター」から来ているそうで、そのフレーズだけで私なんかはDNAが震えちゃいますよ(^^;

アスパラだったりトウキビだったり・・・あるいはホタテだっていいかも知れないけど、旬の食材をバターで炒めてちょいと醤油をひとたらし・・・。
いやいや、熱々のごはんにバターを乗っけて醤油をひと回ししたらそれだけでご馳走ってことも道産子ならよく知っているよね。

その味がラーメンに活かされているってんだから、うれしくなっちゃう!

定番と言っても良いでしょう。
醤油味!

醤油とバターの組み合わせは先に書いた通りテッパンの美味しさ。

塩味はあさり×バターの組み合わせ。

これまた「アサリバター」という居酒屋定番メニューがある通り、風味の相性は抜群。
そこにここの店主の工夫のガーリック風味のアクセントが絶妙に効いてて、後を引く美味しさになっている。

こちらは辛味噌味。

味噌×バターのこれまた間違いのない組み合わせにピリリとした辛味のアクセントが加わりレンゲが止まらなくなる。

これらに合わせる麺は縮れがしっかりとしてすすり心地も気持ちいい札幌スタイルの麺!
バターに負けない風味の良さは道産小麦のなせる技なんでしょうね。
どのスープとも相性は抜群にイイ!

そしてなんと言ってもここで注目すべきは「低温調理チャーシュー」
なんと一杯当たりにたっぷり100gも入っているから食べごたえも十分。

さらに仕込みに4日もかけているという手間のかけ方。
低温調理で火を通した後にもじっくり漬けダレに漬け込み味を沁み込ませるという独自手法で肉の旨みがずば抜けている!

ラーメンが運ばれてきてすぐの「レア感の強い」状態もいいのだが、徐々にスープで温められほんのり温もりが加わった肉は甘みも増し最高の仕上がり。 是非時間経過とともに膨らむ肉の旨みも堪能してほしいところ。

チャーシュー一つからも美味しいものを食べてもらいたいという意思の伝わる一杯。
加えて大好きなバターの風味がたまらない!!
身近なバターでありながら、なぜか札幌ラーメンの「味噌バターコーンラーメン」なんかは観光客向けメニューと位置付けられることが多くて、地元民はあまりなじみがなかったりしますよね。

実はこちらの店主さん。
出身は道外の方。
あえて一歩引いたスタンスでバターとラーメンの組み合わせを見ることでその魅力を再発見されたのではないでしょうか。
私自身も今一度バターの底力ってやつを思い知らされた感じ。 皆さんも是非先入観無しで食べてみてください! ハマるかもよ~!

【ジャンバタラーメン】
住所:札幌市東区北23条東1-4-11 堀江ビル 1F
営業時間:[平日] 11:00~15:00/17:00~22:00 [土・日] 11:00~20:00
定休日:月曜日・第1火曜日
TEL:011-743-7333

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自然の恵み すすり

続いてご紹介するのはすすきのに2016年6月にオープンした「自然の恵み すすり」です。

この特集でも毎年新しいキーワードが登場していますが、ここ数年の札幌ラーメン業界の注目されるキーワードやトレンドをいくつかちょっとピックアップしてみましょうか。
「自家製麺」「北海道産小麦」「醤油清湯」「鶏の旨み」「化学調味料不使用(無化調)」「穂先メンマ」「高級塩」・・・そして「低温調理チャーシュー」

まだまだ他にもキーワードやトレンドはありますが・・・。
とりあえず上記に書かれたキーワード。
普通なら新店のコンセプトに「ど・れ・に・し・よ・う・か・な」なんて考えるところかもしれませんね。
ところがこちらのお店に関しては・・・・「ハイ!全部採用!」ってやっちゃっているからすごい!!

こちらのお店が登場したとき、その特徴を聞いてびっくりしましたよ!
「えええ!全部採用ですか?(*o*)」ってなもんです!

時代のキーワードを欲張りに取り入れたお店です!

写真はトップメニューの「淡麗中華そば」

黄色い鶏油(チーユ)が浮かび、鶏の旨みが押し寄せてくる。
そしてその後醤油のキリリとした美味しさ・・・。
うん!今の旬のラーメンと言っていいトレンドを代表する味わい。

説明書きには「ジャンクフードや旨味調味料に慣れてしまった舌には「物足りなさ」を感じるかも」といった一文もありましたが、素材の旨味が次々押し寄せてきて、食べ進むほどに
舌を満足させてくれる。

甘みを感じるしなやかな自家製麺がまたイイ!

相当マーケットを熟知し研究されているのだと思う。
そしてそれが単純にキーワードを組み合わせただけというのではなく、見た目から味まできちんと配慮が行き届いているのが素晴らしい!

こちらは「ワンタン白中華そば」
最初の「淡麗中華そば」より醤油をやや抑えた優しい味わいが特徴。

ちなみにこのワンタン!
皮を楽しめるように具は少なめのタイプで、私のストライクゾーンのど真ん中! 大きな皮で滑らか~(^^)
口にチュルルンと入った時の感触がたまらない!

そしていよいよ真打登場!
かなりレア感の強い低温調理チャーシュー。
そのまま食べても柔らかくて肉の旨みもしっかり中に含まれているのだが・・・・。

これまた個人的な感想なのだが、ちょいとスープに浸してピンクと茶色のグラデーションになったあたりが最高の食べごろ(^^)b

単純に時代のキーワードを並べただけじゃなく、食べ進めるほどにこのお店の魅力が伝わってくる。

味はもちろんだが、見た目の演出も含め「ワクワクさせる」何かがあるんだよね。

世の中「欲張り」は損をすることも多いけど、色んな魅力的なキーワードを沢山取り入れたこちらのお店。
むしろそれが良い結果的になっているのかも知れないですね。

「楽しませよう」「喜んでもらおう」という配慮が随所に感じられるのでした。

【自然の恵み すすり】
住所:札幌市中央区南8条西3丁目7-40
営業時間:11:30~22:30
定休日:月曜日 ※月曜日が祝日の場合、火曜日が定休日
TEL:011-513-0446

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らーめん さかい

最後にご紹介するお店はこちら。
2016年3月オープンの「らーめん さかい」です。

店主さんは元々寿司職人らしく、ラーメンは「独学です」とのこと。
独学とはいいながらスタンダードなメニューから様々な挑戦的なメニューまで提供されており、訪問するたびに「おっ!」と思わせる驚きをくれる注目店。

メインのスープはお店の告知によると「コラーゲンたっぷりの鶏白湯をベースに羅臼の真昆布や干し貝柱等からとった魚介和出汁を合わせたもの」がベースになっているスープらしい。

写真は「旨塩」というメニューなのだが、なるほど!
複雑な旨みたっぷりのスープながらすっきりしてとても飲みやすい。

驚くのはスープの中に投じられたレモン。
最初は「え?」と思うのだが、このさわやかな香りと酸味が思いのほか相性抜群。
良いアクセントにもなっている。

こちらは鶏そば醤油。
中央のレアチャーシューが実に美味しそう!
和の職人の経験からだろうか、シンプルながら彩りを配慮した盛り付けが光りますね。

鶏の美味さをキリッとした醤油がまとめ上げるシンプルだけどしみじみ美味しい一杯。

パツンとしたストレートの細麺もすすり心地が抜群。

限定メニューにも積極的に取り組んでいてこちらは1月の限定メニューだった「鯛塩らーめん」

鯛の上品な出汁の香り。
ほんのりした甘さが口の中に広がる。
そして単なるお吸い物ではなくちゃんとコクが加わりラーメンとしてうまく仕上げられているところにもセンスを感じるなぁ。

仕上げにいただいた「真鯛昆布〆茶漬け」
昆布〆された真鯛の切り身の乗ったご飯茶碗。
そこにこの出汁をかけていただくと、ちょっとした料亭気分(^^) 贅沢~!

そんな「和」や「やさしさ」が溢れたラーメンが得意なのかと思えば、こっさり味噌なんていうしっかりパンチの効いた一杯も秀逸だったりするから面白い。

とろみさえ感じるスープは出汁の旨みとコクがきっちり同居。
やや強めに効かせたゴマの風味がうまくまとめてくれている印象。

ラーメンは独学と言いながら、こういう味のまとめ方は「経験」や「センス」によるものなんでしょうね。

ついでに書いちゃうと、ここのチャーハンや油淋鶏が絶品だったりする(^^;
え~っと。。。元中華の職人さんだっけ?と勘違いしちゃうほどの美味しさ。

このでっかい油淋鶏がなんと3個で300円(*o*)

半チャーハン300円なんて手ごろな価格も嬉しい。

いや、嬉しいとばかり喜んでもいられないな。
サイドメニューが安くて美味しいお店はダイエットの敵です(-_-)

【らーめん さかい】
住所:札幌市北区北38条西5丁目1-57 初音ビル1F
営業時間:11:30~15:00(14:45 L.O) 17:00~23:00(22:30 L.O)
定休日:水曜日
TEL:011-727-1166

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ということで、低温調理チャーシューを提供している新店にスポットを当ててみました。
お分かりの通り、低温調理チャーシューを提供しているけれど「それだけがウリ」というお店はないんですよね。
冒頭にも書いた通り、”美味しいものを提供したい意識の一つが低温調理チャーシューというカタチになって表現されているだけ”と言ってもいいかもしれません。

ピンク色の鮮やかなチャーシューの色には確かにそそられますが、それだけじゃなく、その向こう側にある手間を惜しまないこだわりなんかも感じながらいただきたいですね。

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ということで、今年も5週に渡ってお送りさせていただいた「札幌ラーメン最新事情2017」ですがいかがでしたでしょうか?
次々と新しいお店が登場し、新しい流れが生まれている札幌。
ワクワクさせてくれますよね!

今年も駄文にお付き合いいただきありがとうございました!
来年もまたご案内ができるといいな。。。なんて思っています。

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WRITER/大石 敬(札幌ラーメンコンシェルジュ)