前回はプロローグとして、札幌の「冷やしラーメン」について説明しました。
前回の記事はこちら
今回は早速お店を紹介しましょう!
「冷やしラーメン(冷やし中華)」を提供している2店と「本当は冷やしラーメンを名乗りたかった(かも知れない)」の中で注目店の2店をピックアップしました。
※サービス内容、営業時間、定休日等は変更となる場合がございますので、来店前に店舗にご確認ください。
ラーメンの大公
プロローグにあたる前回の記事で書いた通り、札幌ではいわゆる「冷やし中華」を「冷やしラーメン」と呼ぶことが多い。
前回の記事「冷やし中華じゃなくて冷やしラーメン!?」
特に老舗の札幌ラーメンのお店では、夏になると当然のように「冷やしラーメン」の提供をのぼりやPOPで告知されることが多い。
さて、ということで老舗ラーメンの代表格の一つ。「ラーメンの大公」をご紹介したいと思う。
昭和41年創業、今年で創業57年になる老舗中の老舗だ。
店名 | ラーメンの大公(たいこう) |
所在地 | 札幌市中央区南二条西5丁目1 |
アクセス | 札幌市営地下鉄「大通」駅「すすきの」駅からともに徒歩7分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 11:00~23:00 日曜営業 |
定休日 | 水曜日 |
席数 | 28席(カウンター10席) |
(店舗情報の引用元:食べログ)
正統派ノスタルジック札幌ラーメンが食べられる店
大公と言えば「正統派ノスタルジック札幌ラーメン」が食べられるお店だ。ラードであおり調理をされたモヤシがイイ!
西山製麺のプリップリの黄色い縮れ麺もThe・札幌ラーメンの味わい。
味噌ラーメンに代表される札幌ラーメンって、北国の寒い気候風土から生まれたラーメンだよなぁとつくづく思う。
そう!北国の寒い気候風土から生まれたであろう札幌ラーメン!真冬には最高のご馳走。
7~8月しか食べられない「冷やしラーメン」
ということで、夏になると提供される大公の冷やしラーメン。
店内のメニュー表で一年中目にするのだが、提供は期間限定。
6月の初夏の暑い日や、残暑厳しい9月に行っても食べられない貴重なメニューだ。
ということで、こちらが大公の冷やしラーメン。まさにこれぞ札幌の冷やしラーメンといったビジュアル。
冷やしラーメンの三種の神器と言えば、まずキュウリ、
錦糸卵、
そして、ハム(またはチャーシュー)。
この3つということで異論はないでしょう!
これらを細切りにして麺と一緒にずずずっと啜ると「ああ、夏が来たなぁ」と思うのは私だけじゃないはず。
大公ではそのほかにワカメや、
中華クラゲ、トマト、紅ショウガなどが彩りを添えてくれる。
コシが強い札幌の縮れ麺が甘酸っぱいタレと相性抜群!
プロローグで書いた通り「冷やしラーメン」は首都圏の「冷やし中華」が渡って来たものだと思う。
だが、一般的な中華料理店で使用されるいわゆる「中華麺」より、縮れが強くて一般的な中華麺よりやや太くコシの強い札幌の縮れ麺。これが実にいいのである。
思いっきり偏った地元びいき発言をしていいですか?
「札幌麺の方が冷やしラーメン(冷やし中華)では美味しいと思う!」
タレは麺に絡めるだけじゃもったいない
タレというよりは少なめのスープという見た目。食べやすく仕上がっているのも大公の特徴だ。
冷やしラーメンではタレ(スープ)は飲まない人が多いけど、ここ大公ではスープも一緒に味わいながら食べます。
添えられたカラシをちょいと麺に付けながら食べるもよし!ピリッとした辛さも食欲を刺激してくれます。
優しい味わいのチャーハンもおすすめ
食欲を刺激してくれるのがわかっていたから……実は半チャーハンも一緒に注文していたりして。
ここのチャーハンは薄味で優しい味わい。
ちなみに平日のランチタイムには味噌・醤油・塩ラーメン+チャーハンのお得なセットもあります。
が、冷やしラーメンは対象外ですからね。ご注意ください。食べたい方は単品で半チャーハンをご注文ください。
札幌のオールドファンにとってみれば「これぞ冷やしラーメン」。名称の混乱はあるにしても、札幌で冷やしラーメンと言えばやはりこれなんだと思う。
このお店が札幌の冷やしラーメンのルーツというわけではないけれど、札幌冷やしラーメンの原点の一つだろうし、この味が昔から愛されてきたのも間違いないと思う。
まずは、現存する老舗ラーメン店の中から代表的なお店をご紹介しました。
定番の味噌・塩・醤油もいいけれど、夏の短い期間しか提供されないこの冷やしラーメン。歴史を感じる意味でも今年は一度行ってみませんか?
麺や 貴一
2019年に札幌市北区の北34条エリアでオープンした「麺や 貴一」。2021年12月に現在の元町エリアへと移転した。
移転前の背脂中華を食べた時の印象としては、煮干のしっかり効いたパンチのあるラーメンで「煮干しをワイルドに効かせているけど嫌みが無い」というもの。
煮干の使い方が上手いなぁと思ったのを覚えている。
コロナ禍もあり、移転してから訪問できずにいたが、友人からの評判は「全部のメニューが美味しい」というものと「夏の冷たいメニューが両方とも美味しい!」というものだった。
店名 | 麺や 貴一(たかいち) |
所在地 | 札幌市東区東苗穂12条3-1-5 |
アクセス | 地下鉄東豊線「元町」駅から4,070m |
駐車場 | あり(3台/店舗前) |
営業時間 | 11:00〜15:00、17:00〜21:00(L.O.20:30) 日曜営業 |
定休日 | 火曜日 |
席数 | 13席(カウンター7席) |
(店舗情報の引用元:食べログ)
夏期限定メニューの「冷たい煮干し中華」
券売機の前で悩むこと20分……ウソウソ!そんなに券売機前で悩んでいたら迷惑でしかたないわっ!
結局選んだメニューは「冷たい煮干中華」。もちろんオプションの「洗い飯付き」をチョイスしてますよ。
大葉・みょうが・わさびの薬味が嬉しい。途中での味変も楽しめそう。
冷たいのに存分に香りが立っているスープ
で、このスープだが……想像していたものの数倍美味しい!
冷たいラーメンはどうしても香りが立ちにくいものだが、口に含むととても良い香りが広がる。
上品ながらしっかりと重層的な旨味を感じるスープは極上!スープ美味しいわぁ。
そして、この麺のはじけるような食感もいい。
しっとりチャーシューの肉のおいしさったらない。
あ、あとスープが美味しいです。(しつこい)
3種類の薬味で味変も楽しめる
大葉やミョウガなどの薬味を加えるとアクセントが加わってまた印象が変わる。
元々こちらの貴一の店主さんは確かに煮干しの使い方が上手い方と思っていたけど、どちらかと言えば繊細というよりワイルド系の印象だった。
だが、このスープは旨味こそ強いけどとても繊細なスープで驚いた。
繊細でありながらも大葉やミョウガ、そしてワサビなど香りの強い薬味を加えても負けない骨太なしっかりした味わいだった。
最初から最後まで美味しいね。
はい、ご馳走様でした!
別料金でもぜひ付けたい!〆は洗い飯
ウソです。ここからはお楽しみ2ndステージの開幕です!〆の洗い飯(別料金)はぜひ食べたかったんだ。
提供される時に
「スープ飲み干せないようならご飯の方にスープを入れて、飲み干せるようならラーメン丼にご飯を入れてください」
との説明があったけど、ここはラーメン丼へドボンの一択!
ほらね、こんなん美味しいに決まっているじゃない。
他にも美味しそうなメニューが沢山あるし、実際ラーメン友達の評判もいい。でも、夏のこの時期だけ提供される冷たいメニューは、今食べるべきメニューだろうね。
食べ終わってから気が付いた!最初に券売機前で「冷たい煮干中華」と「冷たいぶっかけ」をどちらにすべきかしばらく悩んだけど、正解は「両方を注文する」だったかも……。
私も夏が終わる前にもう一度、いやチャンスがあれば数回は行きたいな。
自分の写真をあらためて見ながらそう思ってしまった。
麺屋 漣華
続いてご紹介するのは、札幌市北区の新琴似に2020年12月にオープンした「麺屋 漣華」です。漣の文字は「さんずい」がつきます。
今回は冷たい麺特集なので冷たいメニューをご紹介するのですが、最初に言っておきます!誘惑多すぎ!!!
店名 | 麺屋 漣華(れんげ) |
所在地 | 札幌市北区新琴似7条14-6-27 楼蘭ビル 1F |
アクセス | JR「新琴似」駅から2,071m |
駐車場 | あり(4台/店舗から少し離れた指定駐車場) |
営業時間 | [月・木・金・土・日]11:00~15:00 [水]11:00~15:00、17:30~20:00 日曜営業 |
定休日 | 火曜日 |
席数 | 13席(カウンター5席) |
(店舗情報の引用元:食べログ)
いったいスープは何種類ある!?温かい麺の誘惑
温かい麺だけでも鶏白湯、鶏清湯、あご出汁、海老……一体どれだけスープを取っているの!?ってくらいメニューが豊富なお店。
メニューを見ながら迷えるってのは実に贅沢で幸せなことか。
もうね、クリーミーな鶏白湯もすっきりながら旨味濃厚な鶏清湯も、香り豊かなあごだしワンタンもご紹介したい。
けれど、それはご自身で足を運んで食べていただくとして、今回は冷たい汁たっぷりラーメン2種類をご紹介。
冷たいラーメンのラインナップは「冷たい煮干塩」に「冷たい海老とあご正油」!
トマトやレモンなどのトッピングで冷たさを演出しているものの、先入観なしで見たら「(温かい)ラーメン」と思っちゃうかもね。
レモンの輪切りが夏らしい「冷たい煮干塩」
プロローグでも書いたけど、これが札幌じゃなければ「冷やしラーメン」の席が空いているので、「冷やし煮干塩ラーメン」とか名付けたかったのかも知れないね(笑)
で、このスープが実にイイ!「温度も味のうち」というけれど、ヒンヤリしたスープの口当たりが外の暑さを忘れさせてくれる。
こんなにクリアなのに口いっぱいに広がる煮干の香りと旨味。
そしてこのハリと弾力のある麺。パーフェクト!
鶏チャーシューもうまっ!
途中でレモンを少し絞るとスープがまたキリッと引き締まる。
自家製のラー油で味変
冷たい煮干塩には自家製煮干辣油、冷たい海老とあご正油には自家製海老辣油が提供される。
自家製辣油を使うとこれまた雰囲気が変わってイイ!
たくさんのメニューがあるということはスープの仕込みにかなりの時間を要するということ。
それにもかかわらず、具やこうしたトッピングの一つ一つにも手間がかかっているのが伝わってくる。
ちょっと心配になってしまうぐらい手間暇がかかっていると思う。
口の中で香りが爆ぜる「冷たい海老とあご正油」
こちらは「冷たい海老とあご正油」。
湯気が無いから香りが立ち上るというのとはちょっと違うのであるが、スープを口に運んだ途端に風味が爆発する!
海老の香ばしさにアゴ出汁の上品な香り。
冷たいスープはどうしても香りを立たせるのが難しいのに、これはそれぞれの個性がとても良く出ている。
細麺を啜ると、それと一緒にまた香りが口の中に広がる。まさに「口福(こうふく)」。
冷たいメニュー2種をいただいたが、どちらも甲乙つけがたい美味しさ。
どうやら今年の夏は北海道も暑さが厳しいらしい。暑くて夏バテしないためにはしっかり食べること!
ここの冷たいメニューならどんなに食欲が無くてもスルスルといけちゃうんじゃないかな。
本当は冷たいメニューに限らず「あごだしワンタン」も「鶏白湯」も主役級の美味しさなので、全部を食べてほしいところ。
それにしても、これだけ色んな種類のスープを仕込み、様々なメニューを提供しているこちらのお店。
我々は冷たいメニューで夏を乗り切るとして、むしろ店主さんが夏バテしちゃわないか心配です。
札幌ラーメン 直伝屋
さて、本シリーズ最後のお店はちょっとPRを兼ねたご紹介となります(笑)まぁ番外編的な感じですかね。
拙運営店舗「札幌ラーメン 直伝屋」の夏メニューをご紹介!
直伝屋は札幌スタイルの調理にこだわったラーメンを提供しています。長めにあおった「香ばしい」札幌ラーメンが特徴のお店です。
味噌ラーメンを筆頭に、熱々のラーメンが特徴ですが、「夏は冷たいものが食べたい」というお客様のお声も当然っちゃ当然かと思います。
そこで夏には毎年1~2種類の「夏の限定メニュー」を提供しています。
店名 | 札幌ラーメン 直伝屋(じきでんや) |
所在地 | 札幌市中央区南1条西27-1-1 マルヤマクラス 3F |
アクセス | 地下鉄東西線「円山公園」駅6番出口直結 |
駐車場 | あり(マルヤマクラス駐車場/1000円以上のお買い物で1時間30分無料) |
営業時間 | 11:00~16:00、17:00~21:00(L.O.20:30) ※スープなくなり次第終了 日曜営業 |
定休日 | 当面の間は無休営業 |
席数 | 17席(カウンター3席) |
(店舗情報の引用元:食べログ)
2023年の夏限定メニューは札幌の定番「冷やしラーメン」!
昨年は初夏に「和風かつお出汁冷麺」なんてのを提供しましたが、おかげさまでご好評をいただきました!
そして今年2023年は原点回帰の意味も込めて札幌の定番「冷やしラーメン」をご提供いたします。
連載第7回で何度もお話をしている「札幌では冷やし中華を冷やしラーメンと呼ぶ」という件。当店でもネーミングには正直少し悩みました。
実は以前はすすきのに店舗があった直伝屋。
観光客の多いエリアで「冷やしラーメン」は道外の方に誤解を招きかねないとの思いもあり「冷やし中華」という名前で提供をしておりました。
その後移転し現在のマルヤマクラスという施設内にオープンしたわけですが、ここでは地元のお客様がほとんど。そして、ご年配・ご高齢の方の来店が多い。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もありましたが、最近は地元の「札幌ラーメンのオールドファン」の方々にたくさん来ていただけるようになりました。
札幌ラーメンオールドファンの方にはやっぱり「冷やし中華」じゃなくて「冷やしラーメン」の方がしっくりくるようですね。
提供前から「冷やしラーメンはまだやらないの?」なんてお問い合わせをずいぶんいただきました。
シンプルイズベストな「冷やしラーメン」をご賞味ください
今年の夏はド定番の「冷やしラーメン」をご提供!7月中旬から8月末までの予定です。
具材はキュウリ、細切りチャーシュー、
錦糸卵、の三種の神器に……
札幌スタイル定番具材のモヤシをトッピング!
麺はこれまた安心の札幌スタイルの黄色い縮れ麺。
「あー……札幌の夏はこれだよなぁ」なんて思うのは、自分が年を取ったから、ということがあるにしても、やっぱり札幌っ子のDNAなんじゃないかなと思う
今回は一般的な冷やしラーメンよりやや酸味をキリリと強めに仕上げております。
食欲のない時でも食べやすいですし、酢の疲労回復効果も期待できるのではないでしょうか。
誰がなんと言おうと、これが札幌の「冷やしラーメン」だ!
「あのね、首都圏をはじめとして、全国的には冷やしラーメンというのは汁がたっぷりのラーメンのことを言うんですよ!」なんてありがたいアドバイスをしていただく人が出て来そうな気がします(笑)
道外の方にはちょっとわかりにくいかも知れませんが、「札幌で冷やしラーメンと言えばコレ!」という主張も込めて定番の味と定番の名前をチョイスさせていただきました。
皆様のご来店をお待ちしております!
番外編!居酒屋の定番「ラーメンサラダ」
実はやや番外編的になるものの、ここ札幌にはもう一つご紹介しておきたいメニューがあります。それが「ラーサラ」こと「ラーメンサラダ」です。
札幌の人にとっては定番の居酒屋メニュー。まぁお酒を飲む方で知らない人はいないでしょうね。
誕生したのは昭和60年(1985年)のこと。札幌グランドホテルのレストラン&バー「ビッグジョッキ」で生まれ、オープンから現在に至るまで不動の人気を誇る名物メニューです。
少しずつ全国区の料理になりつつあるとはいえ、まだまだ「札幌名物」の一つといえるのではないでしょうか?
このメニューの発案にも「札幌麺の黄色い縮れ麺が冷やしても美味しいから」という背景があるような気がします。
そして、不思議なことにラーメン店ではあまり提供されておらず、居酒屋でも「お食事」ではなく「サラダ」のカテゴリーに入れられていることが多いですね。
そしてこれをツマミに飲む人も少なくないと思います。
これは個人的な考えですが、札幌グランドホテルの功績はその「味」だけじゃなく「サラダ」と言い切ったことにもあるような気がしています。
よくぞ「サラダ」と言ってくれた!カロリーの罪悪感ゼロ(笑)
これが「グランドホテル式冷やしラーメン」とかだったら罪悪感も感じるし、今のように北海道の居酒屋で広がってはいなかったかもしれませんね。
さいごに
さて、ということで「札幌(北海道)では冷やし中華を冷やしラーメンと呼ぶ」ということを紐解きつつ、札幌の冷たい麺のオススメ店をご紹介してきました。
バラエティ豊かになっている札幌のラーメンシーン。これからも冷たい汁たっぷりのラーメンが登場するでしょう。
中には全国的な流れに沿って、それを「冷やしラーメン」と名付けるお店も出てくることと思います。
それでも「札幌では昔から冷やし中華を冷やしラーメンと呼んでいた」という事実は変わらないですし、老舗のラーメン店を中心に「冷やしラーメン」という名称でいわゆる冷やし中華を提供するお店も続いていくことでしょう。
せっかくですから、それらを理解した上で冷たい麺を楽しんでほしいなと思います。